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シャーロットのおくりもの

 子どもが、「死」を初めて意識するのは、いつ頃のことなのだろう、そして、その子どものどのような時なのだろう。
 『ニューヨーカー』の編集者・ライターとして、数多くの小説や詩、そしてエッセイを発表したE.B.ホワイトの『シャーロットのおくりもの』は、児童文学の世界で「生と死」をとりあげたファンタジーの古典ともいうべき最高傑作だ。クモのシャーロットの的確な描写は、彼の自然観察という確かなリアリティーの土台の上にこの作品が創られたということを物語る。優れたナチュラリストであったからこそ、自然の掟である「死」を描き、「今、生きていることの意味を問いかける」素敵なファンタジーをE.B.ホワイトは創造できたのだ、と僕はおもわず頷いてしまうのだ。

 主人公の子ブタ・ウィルバーは、生まれつきひ弱だったので、早々に片付けられそうになったところを、動物好きの女の子・ファーンに救われる。やがて、ザッカーマンおじさんの農場に売られていったウィルバーは、そこでクモのシャーロットというかけがえのない親友と出会う。幸せ一杯で大きくなるウィルバーには、しかし、二度目の危機が迫っていた。クリスマスの前には、ハムにされてしまうというのだ。その運命からウィルバーを救うため、クモのシャーロットは、クモの糸を使って自分の網に文字を作ることで、人間たちにウィルバーは特別なブタなのだと訴える。シャーロットの機転で有名となったウィルバーは品評会で優勝し、ハムになる運命から免れた。だが、彼を励まし慰め、そしてかけがえのない友情で結ばれたシャーロットは、一年の命しかもってはいなかったのだ。彼女は、寿命が尽き、死んでいく。でも、シャーロットを失ったウィルバーの悲しみを癒すように、春になるとシャーロットが産んだ卵からたくさんの子グモが産まれた。ウィルバーは、この子グモという新たな「生」とともに生きることになる、というところで物語は幕を閉じる。

 僕は、大粒の涙を流してこの物語を読んだ。悲しみの涙?、いいや、「生きることの素晴らしさに感動した涙」も混ざっていたから、とっても大粒の涙になったんだって思うな。

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