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里山の冬:読書の季節「ケビン・ショートの本」

 アメリカ人のケビン・ショートは、ウィルドネス(人間の影響の及ばない手つかずの自然)こそ評価すべき「自然」だと思っていたが、ある日千葉の農道をジョギングしていて、鳥の種類も数も多い事に気づく。鳥は何を餌にしているのだろう。ケビンは、カエルを調べ始める。次にヘビ。そして、カエルが食べている昆虫へと彼の興味は広がり、続いては昆虫の餌である植物についても知りたくなる。日本の僕たちは、虫から始まるのが普通だが鳥への興味から始まるところが、いかにも欧米人らしい。昆虫少年になった彼は、こう書いている。

 「日本の漫画界の神様といってよい手塚治虫氏も、昆虫少年だったらしい。…子どものころ、昆虫に見た自然の不思議や神秘が、のちに作家としてのあのすばらしい想像力につながったのではないかと、ぼくは思っている。…アニメ映画の名作をつぎつぎに作っている宮崎駿氏も、昆虫好きらしい。日本が、今森光彦氏など世界のトップレベルをいく昆虫写真家を多く生んでいるのも、納得がいく。昆虫にルーツをおいた、日本独特のすばらしいクリエイティビティーがあるのではないか、と考えているのはぼくだけだろうか。」と。

 いいや、ケビン。君の言う通りだと僕も思うよ。

 やがてケビンは、田んぼ・ため池・用水路・雑木林・竹林・神社や寺・農家の庭・小屋などの農業用の建物…、たくさんの少しずつ異なる自然環境がパッチワーク状分布をし水と森のうまいコンビによって、「里山」は豊かな生態系を維持し、たくさんの生物のすみかとなっている事に気づいていく。
 そしてケビンは、この本の中で「里山」を守る方策についての具体的提言もしている。

 日本の自然に惚れ込んでいる子どもの心を持った男、ケビンの本にはおもわず肯いてしまう事が一杯だ。

ケビン・ショート著 「ケビンの里山自然観察記」 講談社、

1999年,ISBN-06-206844-3

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