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里山の春:モンシロチョウ

 モンシロチョウ、それは文字通り春の蝶だ。九州の人々には2月下旬に、関西や関東では3月末、北海道では5月の中旬にと、日本全国に春の到来を次々とつげる蝶である。季節の変化は毎日の天候の積み重ね。一日の暖かさだけでは春は来ない。一方、まだ寒いという日があっても、すでに春となっていることもあるのだ。モンシロチョウの初見日は、気象庁の生物暦として観測が続けられている。日本に限らず、北半球の温帯やオーストラリアでは最も普通な蝶だから、誰でもこの蝶の名は知っていることだろう。

 さて、昔々、アメリカは"スプートニクショック"からの立て直しのために、スパイラルカリキュラムという教育改革を行った。アメリカがくしゃみをしたら風邪を引く我が国は、もちろん、ショウジョウバエの飼育を小学生に課した。なぜなら、ショウジョウバエは、高校で遺伝学を学ぶのに必要だ。虫めがねで見ないと分からないショウジョウバエのうんこ。一所懸命育てて繭から出てくるのは、小さなハエ。これは、感動とは無縁の教材である。生きものは、モリモリ食べてどんどんうんこをするんだってことを教えてあげたいな。これ、生きものの本質でしょう? さて、もっとずーっと昔、我が国の小学校では、モンシロチョウの青虫を育てていた。青虫はやがてサナギになる。子どもたちの期待が頂点に達した頃、サナギから羽化した蝶は、子どもたちの視線を浴びながら教室の中を飛ぶ。子どもたちにとってかけがえのない感動の体験だ! それに、蝶になると期待をしていたのに、この期待はアオムシコマユバチによって裏切られる場合があるのもいいなぁ。”蝶の幼虫に寄生するハチがいるんだよ”と先生はここで得意げに話をすることが出来るではないか。先生は、偉くなくてはいけない、尊敬されなければいけないのだ。全国で取り組めたモンシロチョウの幼虫飼育は、素晴らしい教材であったと私は思うのである。

 モンシロチョウを見ると、へそ曲がりの私は、ついこんなことを考えてしまう。

モンシロチョウの写真

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