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里山の夏:ゴマダラカミキリ

 子どもの頃、家の庭に無花果(イチジク)の木があった。湿り気のある土地を好む木であるから、庭植えにはめったにしない木であるが、我が家には、実生の茂木枇杷もあったし、桃の葉は汗疹(あせも)に良いから、たらいで行水を使う時には、その葉をよく揉んで身体を洗ったものだ。カキの木は、甘柿と渋柿の2本があり、渋柿の方は焼酎を霧吹きして熟柿にして食べた。ユスラウメの実は、ほんのりと甘く、梅の実はもちろん梅干用、南天もその葉を赤飯に入れるためであったし、祖父の喘息の薬として万年青(オモト)も…と景観の庭ではなく、実益の庭をいつも母は手入れしていた。

 無花果の木には、いつもきまってゴマダラカミキリがやって来た。捕まえるとギイギイと鳴いた。腕を這わせると脚の爪が肌に痛い。長い触角を動かし、力強くもがくこの虫をしっかりと掴むと、自分が少し偉くなったような気がして嬉しかった。

 子どもの頃の思い出を切り取るようにシャッターを押した。

ゴマダラカミキリの写真

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